「400店から270店へ」——うなぎの成瀬FC加盟者たちが直面した現実
fc_slug: unagi-no-naruse
date: 2026-04-20
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description: うなぎの成瀬フランチャイズが急拡大から大量閉店に至るまでの経緯と、加盟者の視点から見えてくる「急拡大FCの終わり方」を考察する。
あなたが2023年にフランチャイズ説明会に参加したとしよう。
テーブルの上には、滑らかな紙のパンフレット。「職人不要・調理師免許不要・1日で開業準備完了」という文字が並んでいる。担当者は言う。「うなぎって、実はすごくシンプルに提供できるんです。だからこそ、今が最大のチャンスなんです」
その言葉を信じて、数百万円の加盟金と設備費を投じた人たちが、日本中に何百人もいた。
そしてその多くが、2年後に何かを「学んだ」。
最初はうまくいっていた
うなぎの成瀬の初期モデルは、確かに秀逸だった。
シンプルなメニュー3種。冷凍鰻を蒸し機で処理。タレは本部供給の統一仕様。
これは「誰でもできる」という意味ではなく、「オペレーションの属人性を極限まで排除した」という設計の話だ。ラーメン一杯を作るよりも、習得コストが低い。それが消費者にとっても「わかりやすさ」につながっていた。
メニューが3つなら、迷わない。安い。うまい(少なくとも「コスパが良い」)。
SNSでバズった。行列ができた。加盟希望者が殺到した。2022年9月の1号店から、わずか1〜2年で400店舗に達した。これは実際の数字だ。
そして「改善」が始まった
問題は、成功したモデルを「改善」しようとしたことから始まった。
2024年8月、本部はメニューを3種から9種に拡充した。アメリカウナギも導入された。
経営的には理解できる判断だ。競合との差別化、客単価アップ、メニューバリエーションへの需要——数字上のロジックは成り立つ。
しかし、消費者が「うなぎの成瀬」に来ていた理由は何だったか。
「安くて、わかりやすくて、なんとなくうまいから」だ。
9種のメニューが並んだとき、消費者の行動は変わった。「なんか選ぶのが面倒になった」。SNSには「アメリカウナギは違う」という投稿が相次いだ。
加盟店のオーナーたちは困惑した。「何も変わっていない」はずなのに、客足が減っていく。
鰻価格高騰が止めを刺した
メニュー改定の混乱が続く中で、もう一つの波が来た。
鰻の稚魚(シラスウナギ)の不漁と円安が重なり、鰻の原材料価格が高騰した。これは業界全体の問題だったが、低価格・シンプルモデルを訴求してきたFCほど、価格転嫁の余地が小さいという構造的なトラップに引っかかった。
価格を上げれば「コスパの良さ」という最大の武器が失われる。価格を据え置けば、利益が消える。
加盟店のオーナーたちは、選択肢のない場所に立たされた。
閉店が続き始めた。100店舗超が消えた。
本部で何が起きていたか
フランチャイズビジネスインキュベーション株式会社——うなぎの成瀬の運営会社——は、2025年8月期に純利益が約4,000万円の赤字に転落した。
そして2026年3月31日、AIフュージョンキャピタルグループが株式の58%を5,800万円で取得した。
これは事実上の身売りだ。
加盟店から集めるロイヤリティで成り立つビジネスが、加盟店の閉店ラッシュで機能不全になった。本部も被害者だった——という言い方もできるかもしれない。
しかし加盟店のオーナーたちから見れば、「急拡大の恩恵は本部が受けて、リスクは加盟者が負った」という体験をした人も少なくなかっただろう。
「急拡大FCのサイクル」という現実
うなぎの成瀬の事例を観察すると、近年のFC業界で繰り返されてきたパターンが見える。
第1フェーズ:シンプルモデルで拡大
オペレーションが単純で、SNS映えし、参入ハードルが低い業態が加盟者を集める。
第2フェーズ:「改善」による差別化軸の崩壊
本部がメニュー拡充・価格変更・新業態追加を試みる中で、元々の「わかりやすさ」が失われる。
第3フェーズ:外部ショックと閉店加速
原材料高騰・競合増加・トレンド変化が重なり、採算の合わない店から順に閉まっていく。
第4フェーズ:本部の経営危機と救済
加盟店収益悪化→ロイヤリティ収入減→本部赤字→身売り・民事再生。
このサイクルは、ジュピターコーヒー(2026年1月民事再生)でも、かつてのいくつかのFC業態でも観察されている。
あなたが「加盟前」に持つべき問い
うなぎの成瀬から学ぶとしたら、何か。
私は「5年後のモデルが描けるか」という問いだと思っている。
「なぜ今、この業態がうまくいっているのか」を分解すること。
うなぎの成瀬がうまくいっていたのは「シンプルさ」だった。では5年後も、本部はそのシンプルさを守るインセンティブを持っているか?
加盟金を集めるフェーズが終わり、ロイヤリティで収益を出すフェーズに入ったとき、本部はメニュー拡充・客単価アップ・付随サービス追加に動きやすい。それは加盟者にとっての「良い変化」とは限らない。
「今の訴求点が5年後も維持されるか」を、加盟前に本部に問い、記録しておくこと。
これは権利ではなく、リスク管理だ。
残った270店舗の人たちへ
今もうなぎの成瀬の看板を掲げている270店舗のオーナーたちに、あえて言いたいことがある。
新しい経営主体(AIフュージョンキャピタルグループ)が何をするかは、まだわからない。
再建されるかもしれない。新たなメニュー改革が来るかもしれない。追加サポートが充実するかもしれない。あるいは、加盟条件が変わるかもしれない。
いまできることは、本部の動きを注視し、自分の契約条件を理解し、撤退ラインを自分で決めておくことだ。
フランチャイズは本部への依存関係が前提だが、最後に意思決定するのはあなた自身だ。
終わりに——急拡大FCに「乗る」ということの意味
2023年に「うなぎの成瀬」に加盟した人たちを、私は責める気にはなれない。
あの時点での情報と状況を考えれば、「合理的な判断」に見えた面もある。
ただ、今後FC加盟を検討するすべての人に伝えたいのは、「急拡大中のFCに乗ること」は、その勢いと同時に、そのモデルの脆弱性も引き受けることだということだ。
うなぎの成瀬の400店舗が270店舗になった事実は、消えない。
しかし、その事実から何を学ぶかは、あなたが選べる。
*本記事はニュース・公開情報に基づく考察です。特定の個人・加盟店を批評する意図はありません。加盟検討の際は必ず本部説明会・契約書を確認してください。*