「結婚相談所FCで脱サラ」した42歳が、1年後に語った3つの誤算
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date: 2026-04-30
「人の幸せに関わる仕事をしたい。しかも自分でビジネスを持ちたい」——その2つの願いを同時に叶えられると思って、私は42歳で会社を辞めた。
選んだのは、結婚相談所のフランチャイズだった。
業界最大手のプラットフォームIBJ(日本結婚相談所連盟)に加盟し、自宅の一室をカウンセリングルームに改装した。初期費用は約200万円。「在宅で始められる、在庫もいらない、人の役に立てる」——そのキャッチフレーズに、私は素直に惹かれていた。
1年後、私は何を学んだか。
これは、結婚相談所FCの「理想と現実」を、できるだけ正直に書いた記録だ。
加盟前に思い描いていたこと
前職は大手メーカーの人事部。採用面接・異動相談・退職面談を10年以上やってきた。「人の話を聞くことには慣れている」という自信があった。
結婚相談所FCを選んだ理由をあらためて整理すると、こうなる。
- 初期費用が約200万円と低い(貯金から出せる範囲)
- 在宅・無店舗で始められる(家賃ゼロからのスタート)
- IBJネットワークで数万人の会員紹介が可能(独自の人脈がなくてもいける)
- 月会費というストック収入がある(契約が積み上がれば安定する)
計算もした。月会費を1.5万円と設定して、30名の活動会員がいれば月収45万円。成婚が年10組出れば、成婚料(30万円/組)で年300万円。合計で年収800万円以上も狙える——と、スプレッドシートに書き込んだ。
この計算が、あとで全部「理想値」だったとわかることになる。
誤算その1:「IBJネットワークがあれば会員が集まる」は間違い
IBJに加盟すると、全国4,500社超の加盟相談所が保有する会員情報にアクセスできる。つまり、「紹介できる異性の数」は加盟した瞬間から膨大にある。
でも私が気づいていなかったのは、「紹介できる相手がいる」と「自分の相談所に入会してくれる人がいる」は、まったく別の話だということだ。
IBJのネットワークで相手を探せるのは、すでに「どこかの相談所に入会している人」だけだ。 入会してもらうには、まず自分の相談所を見つけてもらい、信頼してもらい、お金を払ってもらわなければならない。
最初の1ヶ月、問い合わせは2件だった。
SNSを始めた(Instagramで婚活コラムを投稿)。ブログを書いた。知り合いへの案内メールも送った。半年で入会してくれた会員数は7名。
月会費1.5万円 × 7名 = 月収10.5万円。固定費(システム費・ネットワーク費用・広告費)を差し引くと、手残りは月4〜5万円だった。
前職の月収の約10分の1だ。
誤算その2:「人の話を聞くのが得意」≠「婚活のサポートができる」
人事部で培った「傾聴力」は、確かに役立った。会員と話すと「この人に話してよかった」と言ってもらえることも多かった。
でも、婚活のサポートは「聞く」だけでは終わらない。
お見合い相手を探してアポを取る。 IBJのシステムを使って、条件に合う相手の仲人(他社の担当者)にアプローチし、「うちの会員をよろしくお願いします」とお見合いを申し込む。この「お見合い申し込み・調整業務」が想像以上に時間を取った。
- 1名の会員に月5〜10件のお見合いを組む
- 相手の仲人との調整メール・電話
- お見合い後のフィードバックヒアリング
- 次の相手の選定・再申し込み
7名の会員で、月40〜60時間はこの業務に使っていた。これは「聞く仕事」ではなく、「コーディネーター兼事務処理担当」の仕事だった。
会員が増えれば増えるほど、一人あたりへの関与時間は圧迫される。「丁寧なサポート」を売りにしている以上、質を下げたくない。でも時間は有限——この矛盾が、半年を過ぎた頃から重くのしかかってきた。
誤算その3:「成婚=ゴール」ではなく「成婚=会員が去ること」
加盟して9ヶ月目、担当した会員の一人がついに成婚することになった。
長い時間をかけてサポートし、ようやく「この人だ」というお相手と出会えた。感動的だった。成婚料(30万円)も受け取れた。
でも同時に、月会費1.5万円を払ってくれていた会員が一人いなくなった。
当然のことなのだが、これが繰り返されると「成婚を出すと収入が減る」という奇妙な感覚が生まれてくる。7名から始まった会員が、成婚・退会で6名になり、5名になる。その分を補うための新規入会者を絶えず獲得し続けなければならない。
婚活ビジネスの本質は、「成婚させながら、同時に新規を増やし続けること」だ。
これが回り続けるには、「成婚実績」という口コミが広がり、入会希望者が増えるという好循環が必要だ。でも最初の1年は、実績がないから口コミも広がらない。
鶏と卵の問題は、どのビジネスにもある。でも婚活業では、その「最初の壁」を越えるまでの時間が、想像より長かった。
1年後の現実:数字と向き合う
1年が経過した時点の状況を、正直に書く。
| 指標 | 1年後の実績 |
|------|------------|
| 累計入会会員数 | 14名 |
| 現在の活動会員数 | 10名 |
| 成婚退会 | 2組 |
| 月商(月会費+成婚料年換算) | 約20万円/月 |
| 実質手取り(経費差引後) | 約12万円/月 |
| 投下時間 | 週35〜40時間 |
前職の月収は約55万円だった。現在の12万円は、いまだにその20%程度だ。
「でも、2年目・3年目になれば変わる」という話は何度も聞いた。実際、加盟5年目のオーナーと話す機会があり、その人は年収600万円を超えているという。
彼女が言った言葉が刺さった。「最初の2年は、収入の仕事じゃなく、信頼の仕事をしていると思うといい。」
それでも続けている理由
赤字でも辞めていないのには、理由がある。
会員が成婚を報告しに来たとき、本当に嬉しかった。 それは、10年の人事部経験でも感じたことのない種類の嬉しさだった。「自分がいなければ出会わなかった2人」という実感が、この仕事の核にある。
もう一つの理由は、「ストック型収入の可能性」を体感しているからだ。何もしなくても月会費は入ってくる。活動会員が30名になれば月45万円の固定収入になる。その日がいつか来ることを、数字として確信できるようになった。
結婚相談所FCに向いている人・向いていない人
1年経験して、向き不向きについて自分なりの結論が出た。
向いている人
- 地域コミュニティ(PTAや町内会、地域ビジネス)に顔が利く人
- 前職が人材・採用・カウンセリング・ソーシャルワークなど「人を支援する仕事」だった人
- 配偶者や家族も一緒に運営に参加できる環境がある人
- 副業から始めて、徐々にフルシフトできる経済的余裕がある人
- 「長期的な信頼構築」を楽しめる人
向いていない人
- 「すぐに結果が出ないと不安」という人
- 集客・マーケティングが苦手で、本部に任せたい人
- 月収500万円を1〜2年で達成したい人
- 「営業」が嫌いな人
加盟前に確認してほしいこと
あなたが結婚相談所FCへの加盟を検討しているなら、説明会に行く前に次の4点を自問してほしい。
①「最初の会員」はどこから来るか、具体的なアテはあるか。
IBJネットワークは「紹介相手を探すための仕組み」であって、「自分の相談所に入会者を連れてきてくれる仕組み」ではない。最初の10名は、自分の足で集めるしかない。
②1〜2年、月収10〜20万円で生活できるか。
副業や配偶者の収入などのバッファがあれば、この期間を乗り越えやすい。
③「成婚させること」にやりがいを感じられるか。
「独立したい」「自由になりたい」だけでは、会員の婚活サポートのモチベーションが続かない。
④近隣に競合相談所が何社あるか。
IBJ加盟社は全国4,500社以上いる。あなたの地元に、同じIBJネットワークを使う競合がどれだけいるかを確認してほしい。
最後に
私の1年は、「想像より遅かった」。でも「間違いだった」とは思っていない。
42歳で独立したのは後悔していない。ただ、「計算が甘かった」のは事実だ。
結婚相談所FCは、「人と向き合う仕事が好きで、5年先を見据えた投資ができる人」には、本物のビジネスになると思う。
ストック型収入が積み上がった先に、「月30万円の継続収入 + 成婚料 + 副業的なコンサル」という組み合わせができたとき——その自由は、会社員では得られないものだ。
あなたがこの記事を読んでいるなら、どうか「長期戦だ」と知った上で、決断してほしい。
それが、1年目の私が、これから加盟を考えているあなたに伝えたい、ただひとつのことです。
*結婚相談所FC各社の比較データはこちらの記事もご参照ください。加盟前には各社の法定開示書面を必ず入手・精読することをおすすめします。*