「教育で社会貢献しながら稼ぎたい」と思った日に、私が個別指導塾FCの説明会で感じた違和感
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date: 2026-04-27
会社員10年目の秋、上司から「君はいつまでここにいるつもりだ」と聞かれた。嫌がらせではない、むしろ心配してくれての言葉だった。でも私にはうまく答えられなかった。正直に言えば、自分でも「いつまで」の答えを持っていなかったから。
その翌週、転職サイトを開いたはずが、なぜかフランチャイズの説明会予約フォームを送信していた。「個別指導塾FC、教育経験不問」という文言に、なんとなく引っかかったのだ。
子どもの頃から「先生」に憧れていたわけではない。でも「誰かの役に立ちながら、自分のビジネスを持つ」という状態に漠然とした憧れがあった。個別指導塾FCは、その2つを同時に叶えてくれそうに見えた。
この記事は、私が3社の説明会に参加し、調べ、悩んだ記録だ。結論を先に言えば、私は最終的に加盟していない。でも、その判断に至るまでの「違和感」の正体を言語化することが、これから同じ道を考える人の役に立つかもしれないと思って書いている。
なぜ個別指導塾FCを選んだのか——「教育」という言葉の魔力
フランチャイズには様々な業種がある。飲食、介護、清掃、買取……どれも「自分がやりたいこと」とはなんとなくズレていた。飲食は体力勝負でキツそう、介護は資格が必要そう、清掃は地味すぎる。そういう浅い理由で候補を絞っていった末に残ったのが「学習塾」だった。
「子どもの教育に関わる仕事」という言葉には、不思議な正当性がある。
社会的に意義のある仕事をしているという自己肯定感。保護者から感謝される体験。そして「先生という呼ばれ方」。それらが一つのパッケージになって、「個別指導塾FC」という言葉に含まれているように見えた。
最初に資料請求したのは3社。
- 明光義塾(知名度No.1だから)
- スクールIE(「やる気スイッチ」という名前が引っかかったから)
- 個別指導学院ヒーローズ(初期費用が安そうだったから)
それぞれの説明会に参加するまでに、私はインターネットで調べられることは一通り調べた。でも説明会で聞いた話は、ネットの情報とは微妙にトーンが違った。
説明会で感じた「3つの違和感」
違和感1:「収益の話」が薄い
3社とも、説明会の前半は「教育の大切さ」「社会への貢献」「子どもたちの笑顔」に多くの時間が割かれた。それ自体は否定しない。ただ、私が本当に知りたかった「月にいくら稼げるか」という話は、どの会社も後半の15分程度で済まされた。
明光義塾の担当者は「収益は立地次第で大きく変わります」と繰り返し、スクールIEは「開業後12〜18ヶ月で黒字化するケースが多い」と言った。ヒーローズは「小さく始めて育てる」という表現を使った。
どれも間違いではない。でも「どのくらいの生徒数が来れば損益分岐点か」「ロイヤルティは売上の何パーセントか」という具体的な数字は、こちらから質問しないと出てこなかった。
フランチャイズの説明会で収益シミュレーションを積極的に開示しない本部は、珍しくない。でも私はそのとき初めて「なるほど、自分から聞かないと教えてもらえない情報がある」と気づいた。
違和感2:「講師確保」の話が楽観的すぎる
個別指導塾のビジネスモデルの核心は「良い講師を安定的に確保できるか」だ。大学生アルバイトが主力となることが多いが、採用・教育・定着にかかるコストと手間は、本部の担当者が語る以上にかかる。
スクールIEの担当者は「大学が近ければ採用はそれほど難しくない」と言った。明光義塾は「弊社の研修を受ければ教育経験がない方でもしっかり指導できます」と自信満々だった。
でも、私の実家近くで学習塾を経営している知人に後日聞いたところ、「春先に採用した大学生が夏前にやめて、秋以降の授業が回らなくなった」という経験談が出てきた。地方の大学進学率の低いエリアや、競合塾との採用競争が激しいエリアでは、講師確保は想像以上に難しい。
説明会では「採用のコツをサポートします」と言われる。でも「それが難しいエリアはどこか」という質問に、明確な答えは返ってこなかった。
違和感3:「ロイヤルティ」と「指導クオリティ」のトレードオフ
ヒーローズの初期費用300〜800万円という数字は魅力的だった。でも調べていくと、低コスト参入の背景にある「小規模・少スタッフ」の構造が見えてきた。
小規模でスタートすると、在籍生徒数が少ない初期は赤字が続く。赤字期間を乗り越えるための運転資金の見通しを立てることが、スモールスタートでは特に重要になる。
一方、明光義塾やスクールIEは初期投資が2,000〜3,500万円の水準で、そのぶん大型の教室・充実した設備でスタートできる。しかし月次のロイヤルティ負担も重く、「黒字になるまでの体力」が問われる。
どちらが正解というわけではない。ただ、「安いから選ぶ」という判断は、後になって「安い理由」に直面するリスクがある。 私が違和感を感じたのは、各社がそのトレードオフを説明会で積極的に語らなかったことだ。
「塾の先生」ではなく「塾の経営者」になる覚悟
説明会をすべて終えた後、私はある本質的なことに気づいた。
個別指導塾のフランチャイズオーナーは「先生」ではなく「経営者」だ。
生徒を直接指導するのは採用した講師であって、オーナーの仕事は「良い講師を集め、定着させ、保護者との信頼関係を維持し、地域での評判を育てる」ことだ。それは純粋な教育への情熱だけでは足りない、人材マネジメントと営業の世界だ。
私が最初に感じた「教育で社会貢献しながら稼ぎたい」という動機は、嘘ではなかった。でも「塾の経営者として採算を取り続ける覚悟があるか」という問いに、正直に向き合えていなかった。
判断のために確認すべき5つのこと
説明会に参加してから「やっぱりやめた」となることを防ぐために、事前に確認しておくべきことをまとめる。
1. 損益分岐点の生徒数は何人か
在籍生徒数が何人になれば月次の赤字が解消されるか、数字で確認する。「目標生徒数」ではなく「最低限の生徒数」を聞くのがポイント。
2. 出店予定エリアの既存教室との距離
特にスクールIEや明光義塾など規模の大きいチェーンでは、同じブランドの教室が近隣にある場合がある。テリトリー保護の範囲を必ず確認する。
3. 近隣大学・高校の分布と学生バイト採用の実績
「採用できるか」ではなく「採用コストはいくらか」を聞く。地方・郊外エリアでは採用費と採用難が経営を直撃することがある。
4. 運転資金として最低何ヶ月分の資金が必要か
「黒字化まで12〜18ヶ月」というのが平均的な目安なら、その期間のキャッシュアウトを試算する。初期投資の他に手元に残すべき資金を事前に確認すること。
5. ロイヤルティの計算方式(売上対比か、固定か)
売上連動型のロイヤルティなら生徒が少ない時期は負担が軽いが、固定型なら開業直後から重い。自分の経営スタイルに合う方式を確認する。
私が最終的に出した答え
私は結局、個別指導塾FCには加盟しなかった。
理由はシンプルで、「教育未経験の自分が、まず講師として現場を知ることなく経営者として始めることへの不安が消えなかった」からだ。
「先生に憧れていた」という動機と、「経営者として採算を取り続ける覚悟」が、私の中でうまく接続されなかった。加盟すれば解決する問題かもしれない。でも解決しないまま何年も過ごす可能性も、排除できなかった。
ただ、調べる過程で得た気づきは本物だった。「フランチャイズは夢を売っている業界でもある」という事実。 説明会に行く前に、自分の動機が「夢」に近いのか「事業への確信」に近いのかを、正直に問い直した方がいい。
それがわかるだけでも、説明会に行く価値はある。
フランチャイズ加盟を検討しているあなたへ。どうか「説明会の後に後悔しない」ための準備をしてから臨んでほしい。夢は、準備をした人のものだ。