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フランチャイズデータバンク 編集部

居酒屋FCで独立が難しい本当の理由——94社のデータが示す、夜の飲食ビジネスで消えていく店の共通点

居酒屋FCで独立が難しい本当の理由——94社のデータが示す、夜の飲食ビジネスで消えていく店の共通点
Photo by Unsplash

「夜の飲食で独立したい」——そう思ったことはあるだろうか。

居酒屋は日本のFC業界の中で、登録社数がもっとも多い業種のひとつだ。フランチャイズデータバンクのデータベースには現在94社の居酒屋・夜営業系FCが登録されており、これは学習塾(90社)や飲食ラーメン系(83社)をも上回る数字になっている。

なぜこんなに多いのか。それは「参入しやすく、撤退しやすい」業種だからだと言える。逆に言えば、それだけの会社が次々と参入し、次々と撤退してきた歴史がある。

居酒屋FCは「選択肢が多い」ということと「良い選択肢が多い」ということは、まったく違う話だ。

今回は、94社のデータと複数のオーナーへの取材から浮かび上がった「居酒屋FCで消えていく店の共通点」を整理していく。加盟を検討している方には、ぜひ最後まで読んでほしい。

居酒屋FCの「基本コスト」と、多くの人が見落とす費用

まずデータを整理しよう。居酒屋系FCの初期投資は、ブランドによって大きく幅がある。

一般的な居酒屋FCの初期投資の平均は2,800万〜4,100万円程度。これに加えて、飲食FCには「見えにくい費用」がいくつかある。

食材廃棄ロスは毎月発生する。特に居酒屋は生鮮品・刺身・野菜を扱うため、廃棄率が高い。月商600万円の店で廃棄コストが月15〜30万円になるケースも珍しくない。

深夜・休日割増の人件費も重くのしかかる。居酒屋の営業時間は一般に17時〜翌1時。深夜割増(22時以降は25%増)が必要で、週末の時給が上がれば利益率はさらに圧迫される。

内装の経年劣化と修繕費も見落とされがちだ。居酒屋は油・煙・水が多く、厨房機器の劣化が早い。オープンから3〜5年で100万〜300万円規模のリニューアルを求められることがある。

データが示す「夜の飲食は減少傾向のブランドが多い」という事実

94社のデータで気になるのは、store_trend(店舗数の傾向)だ。

「増加中」に分類されるブランドが多いように見えるが、その内訳を見ると急拡大中の新興ブランドと、老舗の安定ブランドが混在していることがわかる。新興ブランドは2〜3年で急拡大した後に一気に閉店するパターンが業界で繰り返されてきた。

対して「減少傾向」にあるのはワタミ、TGIフライデーズ、赤からなど、かつて大手と呼ばれたブランドだ。アルコール消費量が減少し、コロナ後も居酒屋への集客が完全には戻っていない現実が数字に出ている。

「大手ブランドだから安心」という論理は、居酒屋FCにはあてはまりにくい。

消えていく居酒屋FC——3つの共通パターン

複数のオーナーへの取材と、DBデータの分析から、閉店した居酒屋FCには以下の3つのパターンが繰り返されることがわかってきた。

パターン1:「ランチ不可・夜のみ」の収益構造の脆弱性

居酒屋FCは基本的に夜のみ営業だ。つまり売上の機会が1日の半分以下に限定されている。カフェやファミレスがランチ・ティータイム・ディナーの3段階で収益を得られるのに対し、居酒屋はディナーのみ。

ある閉店オーナーはこう話す。「コロナで夜の会食が規制された時、真っ先に死んだのが居酒屋でした。コンビニやファストフードはテイクアウトで乗り越えられた。でもうちには夜しかなかった」。

パターン2:「スタッフ依存」の経営構造

居酒屋は接客・調理・ホールの3ポジションを常に回す必要がある。飲食FCの中でも特に人手に依存する業態だ。データベースに記録されている居酒屋FC加盟者の後悔理由の上位には「採用の難しさ」が必ず入る。

時給を上げれば利益が圧迫され、下げれば人が来ない。この「採用コスト vs 利益」のジレンマは、特に地方都市での居酒屋FCで顕著に現れる。

パターン3:「エリアドミナント戦略」の犠牲になる加盟店

本部が同一エリアに複数店を出店することで、既存加盟者の売上が侵食されるケースがある。「契約書にはテリトリーが明記されていると思っていたが、商業施設内の新店は適用外だった」という加盟者の声は複数記録されている。

居酒屋業態では、同一チェーンが駅の反対側に出店することで、既存店の日販が2〜3割落ちる事例が報告されている。

それでも「生き残る居酒屋FC」の条件

では、どんな居酒屋FCが続くのか。データと取材から浮かび上がった条件は以下の通りだ。

1. 専門特化型のコンセプトを持つ

やきとり・鍋・ホルモン・海鮮など、「この店でしか食べられない」専門性を持つブランドは競合差別化がしやすい。一般的な「和民系」「大衆酒場系」より、専門店型のFC加盟者のほうが閉店率が低い傾向がある。

2. 昼営業・テイクアウトを組み合わせられるか

夜のみ営業のリスクを分散するため、ランチ・テイクアウトを組み合わせられる業態が増えている。「焼鳥弁当」「昼定食」を追加することで月商の15〜20%を昼間帯で補う店舗は、閉店リスクが下がる。

3. 契約書のテリトリー条項を事前確認する

加盟前に契約書の「テリトリー権」の定義を確認することが重要だ。「直線距離500m以内に出店しない」と書かれていても、商業施設・駅ビル内が例外になっていることがある。契約前に「今後の出店計画エリア」を本部に文書で確認する加盟者ほど、後のトラブルが少ない。

加盟を決める前に確認すべき3つの数字

居酒屋FCへの加盟を真剣に検討しているなら、以下の3つの数字を本部に必ず確認してほしい。

① 既存加盟店の「5年継続率」:5年後に何割の加盟店が契約を継続しているか。50%を下回るブランドは構造的な問題を抱えている可能性が高い。

② 直近3年の「年間閉店数」:新規出店数だけでなく、閉店した店舗数も必ず聞く。本部が開示を渋る場合は、それ自体がシグナルだ。

③ 「平均月商」の算出根拠:本部が示す「モデル収支」の売上根拠を確認する。「都内好立地の上位25%の数字」を平均値として提示しているケースがある。「中央値」を聞くことで実態が見えてくる。

夜の飲食で独立する前に、昼の飲食で働いてみる

最後に、取材を通じて繰り返し聞いた言葉を紹介する。

「居酒屋に加盟して後悔している人の多くは、飲食業の経験がなかった人だった。FCだから本部が教えてくれると思っていたが、研修は1〜2週間で終わり、あとは自分でやるしかない。飲食は体で覚えるしかない部分が大きい」(関東・閉店経験者)

居酒屋FCは、正しいブランドを選び、正しい資金計画を立て、飲食業への適性があれば「夢を実現する手段」になり得る。だが同時に、「夜しかない」「人手に依存する」「季節変動が大きい」という構造的な制約は変わらない。

加盟を検討するなら、まず1〜2ヶ月間、近隣の居酒屋でアルバイトすることを強くすすめる。それだけで「向いているかどうか」の答えの8割が出る。

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