「居酒屋FCで独立したい」と思った日に、鳥貴族・つぼ八・はなの舞を調べてわかったこと
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date: 2026-04-28
会社を辞めて、自分の店を持ちたい——そう思い始めたのは、ちょうど40代の半ばを過ぎた頃のことでした。
長年勤めた会社での仕事は嫌いではなかったけれど、毎晩のように通う馴染みの居酒屋で店主と話しているうちに、「こんな場所を自分でつくれたら」という気持ちが少しずつ大きくなっていったんです。居酒屋という業態は、単に「飲み食いを提供する場所」ではない。常連客が集まり、笑い声が溢れ、人と人がつながる場所。そこに夢を感じていました。
ただ、飲食業の経験はゼロ。いきなり独立開業するには技術も知識も足りない。そこで目に留まったのが「フランチャイズ」という選択肢でした。FC加盟なら本部のノウハウを借りられる。ブランドの看板がある。研修制度もある。「これなら未経験でもいける」と思い、居酒屋FCの調査を始めました。
でも調べていくうちに、最初のイメージとは全然違う現実が見えてきたんです。
まず「居酒屋FCの地図」を頭に入れた
居酒屋フランチャイズと一口に言っても、業態は大きく3つに分かれます。
- 均一価格型焼鳥居酒屋(代表例:鳥貴族)
- 大衆居酒屋・チェーン型(代表例:つぼ八、はなの舞)
- 専門業態×居酒屋(代表例:しゃぶしゃぶ、海鮮系など)
私が最初に調べたのは、知名度と話題性で選んだ「鳥貴族」「つぼ八」「はなの舞」の3社でした。それぞれの仕組みを比べていくと、同じ「居酒屋FC」でも考え方がまったく違うことに気づきました。
鳥貴族:「全品均一価格」というモデルの強さと制約
鳥貴族は国産鶏肉100%・全品均一価格という独自ポジションで、全国630店舗(直営・TCC計)まで成長した焼鳥チェーンです。
初期費用は4,000万〜7,000万円。「均一価格居酒屋」というカテゴリを自分たちで作ったブランド力は本物で、「鳥貴族です」と言えば認知度は抜群です。
ただ、調べていくと一つの疑問にぶつかりました。
「全品均一価格」は、価格を上げられないということでもある。
2017年に鳥貴族は280円から298円に値上げしたとき、翌年に既存店売上が下落しました。均一価格という強みは、値上げを非常に難しくするという制約でもあります。原材料費・人件費が上がり続ける環境で、価格を固定し続けることは経営に直接響いてくる。
加盟者の立場から見ると、「本部が価格を決める」という仕組みの中で、自分の努力だけではコントロールできない部分が大きいわけです。ブランドに乗れるメリットと、ブランドに縛られるデメリットを、どう考えるか——それが鳥貴族FCの本質的な問いだと感じました。
つぼ八:老舗ブランドの歴史的重みと現在地
つぼ八は1973年創業、北海道札幌発祥の「庶民の居酒屋」の草分け。かつては全国1,000店舗を超えていたこともある、居酒屋FCの老舗中の老舗です。
初期費用は3,500万〜4,500万円。現在の店舗数は160〜200店舗と、最盛期からは大幅に減少しています。
正直なところ、この数字を見たとき少し立ち止まりました。1,000店舗以上あったチェーンが200店舗を切る水準まで縮小しているというのは、どういう意味なのか。
創業から50年以上が経ち、業態が時代の変化についていけなかった部分があるのは否定できません。低価格チェーン、個人経営のこだわり居酒屋、フードデリバリーとの競争の中で、「総合居酒屋」というジャンル自体の市場規模が縮小しています。
つぼ八のFC加盟を検討するなら、「今のつぼ八がどこに向かっているのか」を本部に明確に説明してもらう必要があると感じました。過去の栄光と現在の競争力は別の話です。JFA(日本フランチャイズ協会)加盟という情報開示の体制は整っており、透明性は一定程度評価できますが、それでも「なぜ今つぼ八なのか」を自分の中で納得できるまで確認することが必須だと思います。
はなの舞:「柔軟性」と「規模の安定」のバランス
はなの舞は全国400店舗を展開する居酒屋チェーンで、チムニー株式会社が運営。
初期費用は4,000万〜8,000万円と幅があり、立地・規模・出店形態によって変わります。
はなの舞の特徴として調べてわかったのは、「地域メニューの許容度」が比較的高いことです。他の大手チェーンが本部の全国統一メニューを徹底するのに対し、はなの舞は地域の食材・メニューを加盟店が一定程度取り入れられる仕組みがある、と説明会で聞きました。
これは「個性のある店にしたい」という私の希望に近い部分もありました。ただ400店舗規模のチェーンである以上、コアなブランドイメージは守る必要があります。「地域性を出せる」と「FCの制約の中で動く」は矛盾する面もあり、その具体的なバランスを説明会で深掘りする必要があると感じました。
3社を比べてわかった「居酒屋FCの本質的なリスク」
3社を調べ終えて、私の中に共通する疑問が生まれました。
居酒屋業態は、本当に「フランチャイズ向き」なのだろうか?
飲食FCの中でも、居酒屋には特有のリスク構造があります。
- 深夜営業の人件費 — 深夜割増賃金、採用難が収益を圧迫する
- アルコール提供というリスク — 酒気帯び運転、トラブル対応が必要
- 景気・社会変化への感度が高い — コロナ禍では居酒屋業態が最も打撃を受けた
- 競合が多様化 — コンビニのお酒、フードデリバリー、個人経営の特化型店舗との競争
特にコロナの教訓は大きい。居酒屋は「非必需品」の最前線にいる業種です。何かあったとき、最初に切られる予算が外食の居酒屋代だという現実を、私たちは2020〜2022年に見ました。
最後に:私が出した結論
調査を続けた結果、私は「居酒屋FCへの即加盟」をいったん保留にしました。
理由は一つではありません。初期費用4,000万〜8,000万円という重さ、薄利の構造、景気変動への脆弱性、人材確保の難しさ——それぞれ単体では解決策があるかもしれないけれど、全部が重なったとき、40代後半で初めて飲食業に飛び込む自分にとって、リスクが大きすぎると感じたんです。
「居酒屋が好き」と「居酒屋FCで稼げる」は、別の話でした。
もし同じように居酒屋FCを検討している方がいたら、伝えたいことが一つあります。「好きだから」という動機は大切にしながらも、数字の現実と向き合う時間を必ず作ってほしい。説明会の感動が冷めた翌週に、もう一度損益計算書を開いてみてください。それでも「やりたい」と思えたなら、きっとそれが本物の動機です。
フランチャイズは夢を叶えるツールにもなれば、借金を増やすだけの仕組みにもなります。どちらになるかは、始める前の調査の深さで、ほぼ決まります。
*本記事に記載のデータは2026年4月時点の公開情報をもとにしています。実際の加盟条件は各社の情報開示書面・説明会でご確認ください。*