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フランチャイズ通信簿 編集部

「モスバーガーで独立したい」と思った日に、私が先輩オーナーに聞いた話

「モスバーガーで独立したい」と思った日に、私が先輩オーナーに聞いた話
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date: 2026-04-22

憧れはあった。仕事帰りに入ったモスバーガーで、バイトの子がテキパキと動いて、焼きたてのパティの匂いが漂う店内を見ながら「この店のオーナーになれたらいいな」と思ったことが、一度や二度ではない。

40代を前にして、脱サラして自分の店を持ちたいという気持ちが膨らんでいた。飲食の経験はなかったが、「ハンバーガーなら誰でも食べているし、FC加盟なら仕組みが整っているはず」という漠然とした安心感があった。

説明会の資料を取り寄せて数字を眺めながら、少し不安になった。初期投資4,000万〜8,000万円。思っていたよりずっと大きい数字だった。その数日後、知人の紹介でモスバーガーのオーナーをしているという田中さん(仮名)に会う機会を得た。神奈川県内で2店舗を運営する、加盟歴12年のベテランだ。

その日の話が、私の「ハンバーガーFC加盟」への見方を大きく変えた。

「儲かっているか」と聞けなかった

田中さんとの待ち合わせは、彼が運営する店の近くのカフェだった。挨拶を済ませて、私はまず「ぶっちゃけ儲かっていますか?」と聞こうとして、言えなかった。

代わりに「経営していて、一番大変なことって何ですか?」と聞いた。

田中さんは少し間を置いて言った。「廃棄との戦い、ですかね。毎日毎日、どれだけ無駄にしないかを考えている

モスバーガーの最大の特徴は「注文を受けてから作る」スタイルだ。それがブランドの強みである一方、作り置きができないということは「売れなければそのまま廃棄」になる食材が出やすい。特に仕込み段階でカットした野菜、解凍した食材は使いきれなければ捨てるしかない。

「月商600万円の店で、廃棄だけで月に15万〜25万円出ることもあります。多い月はもっと。これが原価率を直撃する」

私は黙って聞いた。

「数字」の話をしてもらった

田中さんは、私が加盟を検討していることを知ると、「じゃあ正直に話しますね」と言って、自分の店の大まかな収支を教えてくれた。個人情報なので詳細は省くが、概ねこういう構造だと言った。

月商:約550万〜650万円(立地・季節による)

「全部足すと、良い月で手元に残るのは月に80万〜100万円くらい。でもそこから借入返済、設備の修繕、自分の給与を取ったら…」

田中さんは苦笑いした。「脱サラして年収800万円だった人が加盟して、最初の3年は年収300万円に下がった、なんて話は珍しくない」

私は少し頭が冷えた。

「1店舗では食えない」という現実

「でも田中さんは2店舗運営してますよね。それで収益は安定しているんですか?」

田中さんはうなずいた。「2店舗目を出した時に、初めて事業らしくなった。1店舗だけだと、オーナー本人がシフトに入らないと人件費がかさんで、月商600万円でも手元に残らない。でも2店舗になると、管理・コントロールする視点でやれるから」

ただし2店舗目を出すには、また初期投資が必要になる。田中さんは1店舗目の借入が終わる前に2店舗目の話を進め、銀行融資と自己資金を組み合わせて乗り越えたと言った。

「でも正直、あの時期は本当にきつかった。借入が2本走っていて、売上が月2〜3%落ちるだけで眠れなかった」

このモデルは多くのFC業態で見られる話だ。「複数店舗でスケールする」という戦略は正しいが、その過程でのリスクは2倍、3倍になる。

「フランチャイズだから楽」という幻想

「正直、FCに加盟して楽になると思っていた」と田中さんは言った。「マニュアルがあるし、本部がサポートしてくれるし、ブランドがあるから集客できる。そう信じていた」

現実は違った。

本部が管理するのはオペレーション品質であって、「お店の収益」は最終的に加盟者の責任だ。

毎月本部のスーパーバイザーが来て、QSC(品質・サービス・清潔さ)の評価をされる。点数が低ければ改善指導が入る。それは当然のことだが、「本部が助けてくれる」という感覚はなかったと田中さんは言った。

「あるとき売上が2ヶ月続けて落ちたとき、SVに相談したら「チラシを撒いてみてください」と言われた。それだけ。何百万円もロイヤリティを払っているのに、アドバイスがチラシか、と思った」

これはモスバーガーに限った話ではない。FC本部のサポートには「質のバラつき」があり、担当SVによって対応が大きく異なるケースは業界全体でよく聞かれる。

加盟前に確認すべき5つのこと

田中さんが最後に教えてくれたのは、「自分が加盟前に確認しておけばよかったこと」だ。

1. 既存加盟者の収益データを法定開示書面で確認する

ハンバーガーFCに限らず、全てのFCで法定開示書面(FDD)が本部から提出される。ここには既存店舗の収益情報が含まれているはずだ。「平均月商」だけでなく、閉店件数・解約件数の推移に注目すること。

2. 「廃棄率」を現役オーナーに直接聞く

「注文後調理」スタイルのFCは廃棄リスクが高い。本部の説明では触れないことが多いため、現役オーナーへのヒアリングが必須。月商に対して何%程度廃棄が出ているかを聞くこと。

3. 人件費の実態を把握する

ハンバーガー業態は複数スタッフが常駐するため、人件費の比率が高くなりやすい。最低賃金の上昇トレンドも加味して、今後5年・10年の人件費シミュレーションをしておくこと。

4. ロイヤリティの計算方式を確認する

売上歩合型(売上の5〜7%)か、固定型か。売上が低い月でも固定ロイヤリティを払わなければならない場合、赤字転落リスクが高まる。

5. 自分がシフトに入るのか、マネジメント専念なのかを決める

オーナー本人がシフトに入れば人件費を抑えられるが、それでは「サラリーマンより長時間働いて収入が下がる」状態になりかねない。加盟前に「自分はどのポジションで経営するのか」を明確にしておくことが大切だ。

夢を持つことと、現実を知ることは矛盾しない

あの日のカフェを出た時、私はモスバーガーの加盟を「いったん保留」にした。夢が消えたわけではない。ただ、「なんとなくいけそう」という根拠のない自信が、少し現実的な輪郭を持つようになった。

田中さんは別れ際にこう言った。「私はモスバーガーを選んで後悔していない。でも、もっと準備してから加盟すればよかったとは思っている。特に最初の2年間は、知識がなかったせいで損したことがたくさんあった」

ハンバーガーFCへの加盟を検討しているなら、「好きだから」「知名度があるから」だけで判断するのは待ってほしい。どれだけ好きなブランドでも、経営は別の話だ。

現役オーナーの声を集め、数字を見て、自分の資金力・リスク許容度と照らし合わせた上で判断する。それが、加盟後の後悔を最小限にする唯一の方法だと私は思っている。

あなたは「あの店のオーナーになりたい」という気持ちと、「この数字で本当にやっていけるか」という現実の両方を、正直に向き合えているだろうか。

*本記事はフランチャイズ加盟を推奨または否定するものではありません。記事中の収益数値はモデルケースであり、実際の業績は立地・運営状況により大きく異なります。加盟前には必ず法定開示書面の確認および本部への直接確認を行ってください。*

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