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フランチャイズ通信簿 編集部

FCオーナーになって初めて知る「スタッフ採用」の重さ——収益シミュレーションが崩れる「人件費の罠」

FCオーナーになって初めて知る「スタッフ採用」の重さ——収益シミュレーションが崩れる「人件費の罠」
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「FC本部の収益シミュレーションには、スタッフが定着していることが前提条件として組み込まれている」

ある学習塾FCのオーナーから聞いた言葉だ。加盟前に受け取った収益計算書には「人件費30%」と書いてあった。月商200万円の場合、人件費は60万円。そのうち自分の給与30万円を除けば、スタッフへの支出は30万円。アルバイト3名で回せる計算だった。

だが現実には、スタッフが続かなかった。

半年で3回の採用をやり直した。求人広告に1回あたり5〜8万円かかった。採用後の研修・引き継ぎ期間の「二重人件費」も発生した。1年で採用にかかった費用だけで約40万円。「人件費30%」という前提は、スタッフが安定的に稼働し続ける場合の話だったのだ。

「誰も教えてくれなかった」と彼は言った。そうだろう。本部の収益シミュレーションは「うまくいった場合」をモデルにして作られているからだ。

このnoteでは、フランチャイズ経営において多くのオーナーが直面する「スタッフ採用・定着問題」の実態を整理する。特に「人を雇うのが初めて」という方に届けたい内容だ。

収益シミュレーションに「採用コスト」が含まれない理由

FC本部が提示する収益モデルには、以下のような人件費の前提が置かれていることが多い。

問題は「離職率を考慮しない」点だ。

実際の飲食・小売業のパート・アルバイトの年間離職率は50〜70%という業種も珍しくない。 3名いれば年間1〜2名は入れ替わるということだ。

採用1名あたりにかかるコストを整理すると、次のようになる。

| 項目 | 概算 |

|------|------|

| 求人広告(Indeed・アルバイトEX等) | 3〜10万円 |

| 採用面接の工数(時間コスト) | 1〜2万円相当 |

| 入社研修(既存スタッフの工数を含む) | 2〜5万円相当 |

| 定着するまでの生産性ロス(1〜3ヶ月) | 5〜15万円相当 |

合計すると、1名を採用・定着させるまでに10〜20万円のコストが発生することは珍しくない。

年間2名の入れ替わりがあれば、採用コストだけで20〜40万円。本部のシミュレーションには一切含まれていない数字だ。

なぜスタッフが「続かない」のか

スタッフが定着しない原因はいくつかある。

①FC特有の「マニュアル管理」が窮屈に感じられる

フランチャイズの強みはマニュアルによる品質統一だが、スタッフからすると「自分の裁量がない」「ちょっとした工夫もできない」と感じる場合がある。特にサービス業の接客に慣れた経験者ほど、この制約をストレスに感じやすい。個人経営の飲食店から転職してきたスタッフが「自由が少ない」と言って辞めるケースは、FC業界ではよく聞く話だ。

②オーナー自身が忙しく、スタッフのフォローができない

開業初期はオーナー自身が現場に入り続けることが多い。その結果、スタッフの悩みや不満を拾う時間がなく、退職の兆候を見逃す。「いきなり辞める」と感じるのは、実は「見えていなかった」ケースが多い。

③時給競争に巻き込まれる

近隣の大型チェーンや他業種が時給を上げると、募集が集まらなくなる。本部が設定している「人件費率」は、数年前の最低賃金ベースで計算されていることがある。

2026年時点で、東京都の最低賃金は1,163円(2024年10月改定)。2015年の888円から10年で約31%上昇した。全国平均でも同様の傾向が続いており、年3〜5%の上昇を見込む必要がある。加盟前に5〜10年後の人件費率を計算している人は、驚くほど少ない。

人手不足で「オーナー自らレジに立つ」末路

スタッフが集まらない・定着しないと、オーナーが現場に引き戻される。

「月の半分以上、自分でシフトに入っていた」という声を、複数のFCオーナーから聞いた。飲食系では週60〜70時間の労働になることもある。時給換算すると自分の時給が「実質600〜800円」という計算になるケースも珍しくない。

独立してフランチャイズを始めたのに、サラリーマン時代より長時間・低賃金で働くという状況が起きやすいのが、スタッフ不足の末路だ。

さらに問題なのは「オーナーが現場を回すことに慣れてしまう」点だ。本来は経営判断・本部との交渉・次の投資の計画に使うべき時間が、現場オペレーションに消える。この状態が2〜3年続くと、経営者としての成長が止まる。

あるハウスクリーニングFC(加盟金150万円・月商80〜120万円規模)のオーナーは「スタッフが安定したのは開業から1年半後。それまでは自分が全物件を回っていた」と話していた。その1年半で蓄積した疲労と家族への影響は、数字には現れない。

「スタッフが辞めない店」のオーナーが実践する3つのこと

では、うまくいっているオーナーはどうしているのか。

私が話を聞いた複数のFCオーナーのうち、「この3年でスタッフの入れ替わりが1〜2名だった」という方がいた。業種は介護FC(訪問介護)。スタッフ4名体制で運営している。

彼が実践していたのは以下の3点だった。

①採用基準を「時給目当て」ではなく「仕事内容への関心」で絞る

時給が高いから応募した人ではなく、この仕事に関心がある人を選ぶ。採用に時間がかかっても、ミスマッチ採用を避けることで定着率が上がった。求人票に「こういう人に向いている仕事」を具体的に書くことで、応募の質自体が上がったという。

②毎月1回、スタッフとの「1on1」をルーティン化する

15分程度の個別面談を毎月行う。「最近どうですか」「困っていることはありますか」だけ聞く場だ。退職の兆候(シフト変更希望の増加、沈黙、求職活動の様子)を早期に察知し、対応できるようにした。

「辞めると言ってきてから対応しても遅い。辞めると言う前に気づくことが大事」——これが彼の言葉だ。

③入社後3ヶ月は「定着支援期間」として設計する

入社後3ヶ月はシフトを無理に入れず、研修期間として扱った。「使えない」ではなく「育てる」投資だと割り切り、長期的に考えるようにした。この姿勢がスタッフに伝わり、「ここで続けよう」という意識が生まれたという。

FC加盟前に「人件費の正確な計算式」を持て

最後に、FC加盟前に確認してほしいことをまとめる。

収益シミュレーションの人件費欄を見るとき、以下を追加して計算してほしい。

これを織り込んだ上で「黒字になるか」を確認してほしい。

フランチャイズは仕組みがあれば動く——というイメージがあるが、その仕組みを動かすのは「人」だ。人を採用し、育て、定着させる力こそが、FCオーナーとしての最大の競争力になる。

加盟前の説明会で「スタッフの採用方法と離職率の実績」を聞いてみてほしい。答えに詰まる本部は、この問題を軽視している可能性が高い。その一言が、加盟後の人件費の地獄を防ぐ最初の一手になる。

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