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フランチャイズ通信簿 編集部

フランチャイズ加盟後に「ロイヤルティ値上げ」通告が来た日——契約書で守られているつもりが守られない現実

フランチャイズ加盟後に「ロイヤルティ値上げ」通告が来た日——契約書で守られているつもりが守られない現実
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「加盟金300万円、ロイヤルティ売上の5%。この条件で10年間、変わらない——そう聞いていたのに」

ある居酒屋フランチャイズのオーナーから、こんな話を聞いたのはつい最近のことだ。加盟から4年が経ったある日、本部から1通のメールが届いた。「システム刷新に伴い、来期より月額固定費に情報システム利用料として月2万5,000円を追加させていただきます」。

金額にすれば年間30万円。大きくない、と思う人もいるかもしれない。だが彼の店の月商は約150万円。営業利益率は約8%、つまり月12万円の手取りだ。そこから年30万円が飛ぶ。利益の約21%が消える計算になる。

「契約書を読み返したら、確かに『本部はシステム関連費用を別途請求できる』という一文があった。読んでいたのに、意味を理解していなかった」

フランチャイズのコストは、加盟前に提示された数字だけで動いているわけではない。今回はこの「後から増えるコスト」の実態と、加盟前にできる自衛策を整理する。

ロイヤルティは「契約書に書いてある数字」だけではない

フランチャイズ加盟を検討するとき、多くの人が最初に注目するのがロイヤルティ率だ。「売上の3%」「月額固定8万円」「粗利分配方式で45%」——こうした数字は情報開示書(FDD)や説明会資料に明記されている。

だが実際のコスト構造は、もっと複雑だ。主なFC本部の追加的な費用請求の仕組みには以下のようなものがある。

コンビニの場合、ロイヤルティは「チャージ」と呼ばれ、売上総利益(粗利)の43〜76%を本部が取る構造だ。ローソンの場合、初期費用は500万〜1億円と幅があり、その後のチャージ率も契約タイプによって異なる。セブン-イレブンは国内21,327店舗(2025年時点)を抱えるが、加盟金300万円以上に加え、POSシステム費用なども別途かかる。

これらすべてを合算した「実質ロイヤルティ率」を事前に把握している加盟者は、驚くほど少ない。

なぜ「値上げ」が可能なのか——契約書の構造的な問題

「契約書に書いてある金額が変わるはずない」と思っている人は多い。だが現実には、本部が費用を増やすための「窓口」が契約書の中にいくつも存在している。

最も多いのが「別紙による定め」という構造だ。

例えば、本契約では「ロイヤルティは別紙に定める率とする」と書かれていて、別紙は「本部が随時改定できる」となっている——このような構造の契約が少なくない。加盟者は「ロイヤルティ○%」という数字を頭に入れていても、それが変更可能な別紙に依存していることに気づいていない。

もう一つよくあるのが、「合理的理由があれば変更できる」という条項だ。物価上昇、システム更新、法改正対応——こうした「合理的理由」の解釈は本部側が行うことが多く、加盟者が異議を唱えるのは難しい。

実際、ある学習塾FCでは、2023〜2024年の人件費高騰を理由に「本部サポート費」が月2万円から月4万5,000円に値上げされた事例がある。加盟者は「不当だ」と思っても、契約書に「社会情勢の変化に応じて改定できる」と明記されていれば、法的な争いは困難だ。

値上げ通告を受けた加盟者たちが直面する「選択肢のなさ」

ロイヤルティ値上げの通知を受けた加盟者には、実質的にどんな選択肢があるのか。

1. 受け入れる

大多数の加盟者が選ぶ道。特に多店舗展開しているオーナーや、投資を回収しきっていない段階では、「今やめたら全部無駄になる」という心理が働く。

2. 交渉する

個別に本部と交渉し、猶予期間や一部減額を求める。ただし加盟者の会(チェーンによって組織が異なる)がなければ個人での交渉は弱い。成功例は稀で、せいぜい「半年間の経過措置」程度が落とし所になることが多い。

3. 契約更新を機に脱退する

10年後の契約更新時に更新しないという選択。ただし、この場合も「競業避止義務」により同業種で独立できない期間(2〜3年が多い)が発生する。また更新しない場合の違約金が発生するケースもある。

4. 法的手段

消費者契約法や民法の一般条項(信義則)を使って争う。現実には費用対効果が低く、実行する加盟者は少ない。ただし加盟者の集団訴訟という形で本部と争った事例は日本でも複数ある。

要するに、値上げ通告を受けた後の選択肢は非常に少ない。だからこそ、加盟「前」の段階での確認が重要になる。

加盟前にできる「実質コスト」の把握術

では加盟を検討している段階で、何を確認すればよいのか。

情報開示書(FDD)を徹底的に読む

フランチャイズ加盟前には、中小小売商業振興法に基づき本部から情報開示書が交付される。ここには基本的なコスト構造が記載されているが、「変更できる費用」と「固定の費用」を自分で分類することが重要だ。

「別紙による」「本部が別途定める」「社会情勢に応じて」などのフレーズがある費用は、すべて変動リスクがある。

既存加盟者への直接ヒアリング

本部が紹介する加盟者ではなく、自分で探した加盟者——たとえば同じ商圏外の店舗オーナーに直接話を聞く。「加盟してから増えたコストはありますか?」という質問を必ずする。

過去5年の費用変動を開示書で確認

情報開示書には直近のロイヤルティ変更履歴が含まれることもある。「過去に値上げはありましたか?」と担当者に直接聞き、回答を書面で残す。

「実質ロイヤルティ計算書」を自作する

基本ロイヤルティ + 広告分担金 + システム料 + 研修費 + 指定仕入れの割高分 + 保険料……これらを月次で合計して、売上に対する「実質負担率」を自分で計算してみる。多くの場合、表面上の「ロイヤルティ3%」が、実質7〜12%になっていることがある。

ロイヤルティ体系が「透明なFC」と「不透明なFC」

フランチャイズ通信簿(fc-databank.com)が保有する1,050社のデータを見ると、ロイヤルティ体系の透明性には大きな差がある。

売上連動型(売上の○%)は計算しやすいが、売上が増えるほどコストも増える。対して月額固定型は予算が立てやすいが、売上が低い月に負担が重くなる。近年増えているのが「粗利分配型」で、コンビニが採用しているこの方式では、本部と加盟者が売上総利益を分け合う——その比率が本部に有利なケースが目立つ。

注目すべきは、ロイヤルティを「非公開」としているFCの多さだ。fc-databankのデータでも、ロイヤルティ率を明確に開示していないFCは全体の4割を超える。開示を避ける理由はさまざまだが、「加盟後に判明する」費用が多い本部ほど開示を嫌う傾向がある。

ロイヤルティを積極的に開示している本部は、それだけ透明性の高い経営をしている可能性が高い——これは加盟先を選ぶ際の一つの判断軸になり得る。

最後に:「後から変わらないもの」を確認することが、加盟前の仕事

フランチャイズは長期の契約だ。10年間、同じ条件で経営できると思って始めたビジネスが、3年後に条件が変わっていたとすれば、当初の事業計画はすべて狂う。

「加盟前に教えてもらえなかった」ではなく、「加盟前に確認しなかった」という事態は、残念ながら加盟者の自己責任として扱われることが多い。

加盟を検討している方に伝えたいのは一つだ。「この費用は10年間変わりませんか?」と書面で確認できない項目は、すべて変動リスクがあると考えてほしい

説明会でもらった資料の数字を信じる前に、情報開示書の全文を読み、既存加盟者に聞き、弁護士や中小企業診断士にFCに詳しい専門家のレビューを受ける——これだけの手間をかけて初めて、「想定外のコスト増」を防ぐ準備ができたといえる。

契約書は、本部と加盟者が「同じ未来を見ている」ことを証明するものではない。それぞれの利益を守るための法的文書だ。その前提を忘れずに、加盟の意思決定をしてほしい。

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