FC経営で「外国人スタッフを雇う」現実——飲食・コンビニ・介護系の採用とビザの壁
「アルバイトの募集をかけても、日本人が1人も応募してこなかった」
飲食系フランチャイズを経営するオーナーから、こんな話を聞いた。都市部のラーメンFC店を開業して2年目。開業当初は近隣大学の学生でスタッフを確保できていたが、最低賃金の上昇とともに人件費が増し、求人媒体への出稿費用も年々高騰した。それでも応募は減り続ける。ある月、思い切って求人票の対象を「外国籍可」に変えたところ、翌週には10件以上の問い合わせが来たという。
「外国人スタッフなら採用が楽」——そう思いがちだが、実際に雇い入れる段になると、日本人採用にはなかった手続きと確認事項が山のように出てくる。在留資格の種類によっては、働かせること自体が違法になる。本部からのサポートは「採用自体はオーナーの判断で」とあっさり言われる場合も多い。
この記事では、飲食・コンビニ・介護という外国人労働者の多い3業種に絞り、FC加盟者が実際に直面する外国人雇用の現実を整理する。「外国人を雇えばすぐ人手不足が解決する」という期待を持ちながら加盟を検討している人に、ぜひ読んでほしい。
まず確認すべき「在留資格」の壁——知らないと不法就労になる
外国人を雇用するうえで最初に確認しなければならないのが、在留資格(ビザの種類)と就労可否の組み合わせだ。
在留資格には「就労制限なし」から「就労不可」まで幅がある。主なものを整理すると:
- 就労制限なし:永住者、日本人の配偶者等、定住者、特別永住者
- 資格の範囲内で就労可能:技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能実習(業種により異なる)
- 週28時間以内の就労可能:留学生(資格外活動許可が必要)
- 就労不可:短期滞在(観光ビザなど)
コンビニや飲食の現場で多く働いているのは留学生と特定技能の在留資格を持つ方だ。留学生の場合、資格外活動許可を持っていれば週28時間以内という制限がある。試験期間や夏休み中でも合計週28時間を超えると不法就労となり、雇用主(つまりFCオーナー)も処罰を受ける。
FC本部は採用支援ツールを提供していても、在留資格の確認や適法性の管理はオーナーの責任とされているケースがほとんどだ。外国人雇用状況の届出を怠ると、ハローワークへの報告義務違反にもなる。
ポイントは「採用の際にコピーを取ればいい」だけではなく、更新のタイミングで在留資格が変わっていないかを定期確認することだ。更新を忘れて資格が変わったスタッフを継続雇用した、という事例もある。
飲食・コンビニ系FCの現場——「入れ替わりの激しさ」とルール管理の難しさ
飲食FCで外国人雇用が課題になるのは、採用後のコミュニケーションギャップだ。日本語でのマニュアル理解、接客用語の習得、シフト変更の連絡方法——これらが想像以上に時間と手間を要する。
コンビニ大手3社の場合、本部が多言語マニュアルやeラーニングを整備しており、外国人スタッフの採用は比較的進みやすい環境にある。セブン-イレブンやファミリーマートは21,000店・16,000店規模の運営の中で、外国人スタッフの比率が高い店舗のノウハウを蓄積している。
一方で、加盟者が直面するリアルな問題は次のような点だ:
- シフトの急なキャンセル:母国に一時帰国するタイミングでの連絡不足
- コンプライアンスの認識差:食品衛生や衛生管理の基準が国によって大きく異なる
- 就労時間の管理:複数の店舗でアルバイトをかけ持ちしている場合、週28時間の上限を超えるリスクがある
飲食FCオーナーのある経験談では、「留学生スタッフが試験シーズンに突然来られなくなる。それは想定済みだったが、正月に一時帰国して1か月帰ってこなかったのは予想外だった」という声もある。外国人雇用は採用コストが下がる半面、シフト管理の複雑さが上がるという認識が必要だ。
また、雇用主の届出義務として、外国人の雇い入れ・離職の際はハローワークへの届出が義務(外国人雇用状況の届出制度)となっている。常勤・パート問わず適用され、怠った場合は30万円以下の罰金の対象になる。
介護系FCの特殊事情——「特定技能」と「技能実習」の違いを知らないと危ない
介護FCで外国人採用が増えているのは、業界全体の人手不足が深刻だからだ。2025年時点で介護分野の有効求人倍率は3倍を超えており、人材確保のために外国人採用を戦略的に取り入れるFCも増えている。
ここで混同されがちなのが「技能実習」と「特定技能」の違いだ。
- 技能実習:技術移転を目的とした制度。介護分野では2017年に追加。実習計画の認定・監理団体経由が必要で、事務負担が大きい。2024年に廃止が決まり「育成就労」へ移行予定。
- 特定技能1号(介護):日本語・介護技能の試験に合格した外国人が就労できる。転職が可能で、本人の意思で職場を変えられる。在留期間は最大5年。
- 介護福祉士の資格取得後:在留資格「介護」として長期就労・家族帯同が可能になる。
FCオーナーにとって特定技能は比較的使いやすい制度だが、採用支援会社(登録支援機関)への委託費用が発生する。月額2〜3万円程度が相場で、これは事業計画に織り込んでおく必要がある。
また、介護業種のFC本部によっては「外国人採用を推奨するが、登録支援機関との契約はオーナーが別途行う」というスタンスのところも多い。本部の採用支援とオーナーの法的責任は別物という認識を持っておくことが重要だ。
本部は「助けてくれない」場合が多い——労務トラブルの責任はオーナーにある
外国人スタッフの雇用で労務トラブルが起きたとき、FC本部はどこまで関わってくれるのか。これが、多くのオーナーが加盟後に気づく重要なポイントだ。
FC契約は雇用関係を本部と共有しない。つまり、スタッフとの雇用契約はオーナーが締結しており、労働基準法の使用者責任もオーナーにある。本部が提供するのはマニュアルや研修ツールであって、「このスタッフが不法就労だったかどうか」の責任は問われない。
実際に起きたトラブルの例:
- 特定技能ビザを持つスタッフが就労可能な業種外で働かされていたケース(特定技能は業種限定)
- 留学生スタッフが週28時間を超えて勤務し、入国管理局から調査が入ったケース
- 技能実習生を採用したが監理団体との契約が不適切で、実習計画の認定が下りなかったケース
これらのケースでFC本部が介入したという話はほぼ聞かない。外国人雇用のコンプライアンス管理は、完全にオーナーの領域だと理解しておく必要がある。
社会保険への加入義務も、外国人スタッフにも適用される。一定時間以上働く場合は健康保険・厚生年金への加入が必要であり、これを怠ると後から多額の未納分が発生することがある。
FC加盟を検討している方へ——外国人雇用は「コスト削減策」ではなく「戦略的採用」
外国人スタッフの採用は、人手不足の解決策として有効な手段の一つだ。しかし「日本人が集まらないから外国人で」という後ろ向きな動機で始めると、多くのケースでコンプライアンス管理の甘さが露呈し、後からより大きなコストとリスクを抱えることになる。
現実的に外国人雇用がうまく機能しているFC店舗には、共通点がある。
- 採用の入り口で在留資格を正確に確認し、記録を残している
- 多言語のオリエンテーション資料を自前で用意している
- シフト管理ツールを導入し、就労時間の上限を自動チェックしている
- 社会保険・労働保険の加入手続きを開業時に専門家(社労士)に依頼している
最低賃金が1,500円に近づきつつある2026年、人件費コストをどう管理するかはFCオーナーにとって経営の根幹だ。外国人雇用は確かに採用コストを下げる可能性があるが、法令違反のリスクを理解した上で取り組む「戦略的採用」として位置づけるべきだ。
加盟前に確認すべきは、本部が外国人採用に関してどの程度のサポートを提供しているかだ。多言語マニュアルの有無、在留資格確認フローの整備状況、社労士紹介など——こうした体制を加盟前の説明会で確認することが、長期的な店舗運営の安定につながる。
外国人スタッフと共に経営する現場は、正しく準備すれば大きな強みになる。問題は、その「準備」がどれだけ具体的にできているかだ。
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